「命シヌジガマ」(命をしのいだ洞窟の意)が
呼び起こす未来の繋がり、記憶と無意識、生命のサイクル。
Installation at Nuchishinuji Cave ぬちしぬじガマでのインスタレーション

ぬちしぬじガマでのインスタレーション

PROJECT#1 Installation at Nuchishinuji Cave

沖縄県うるま市(旧石川市)

By Morito & Sigi

7th Dec.2002 15th Dec.2002

インスタレーションの概要

海が隆起した後に、石灰岩が侵食された自然の洞窟。現地の言葉で『ガマ』とよばれるこの洞窟は、沖縄の至る所で見つける事ができます。 人々は昔から、内部に湧き水が流れるガマを地域の共同水使い場などにしたりして、生活に利用して暮らしてきました。自然を尊ぶ沖縄の人々の祈りの場でもありました。 そして第二次世界大戦中には、民間人の避難所としても使用されました。 今回、このインスタレーションの会場となる「ぬちしぬじガマ」の由来は、実際の沖縄での戦闘において、避難した島民の中のたった一人の命も亡くしたことがなかったという、「命シヌジガマ」(命をしのいだ洞窟の意)なのです。 あの頃、ガマの内部に隠れ、辛くもその沖縄の戦いを生き残り、命をつないだ人々の生活はすべてそこから再スタートしました。このように、ガマはいつもそこで起こったすべての出来事をじっと見守り続けて来たのです。 私たちは、この「ぬちしぬじガマ」という特別な空間を使い、過去、現在、未来の繋がり、記憶と無意識、生命のサイクルなど、そういったものが訪れる人と自然に呼応し、コミュニケーションし合うインスタレーションの場にしたいと考えています。

作品・展示物の説明

植物、オブジェ、鏡、豚の油の炎、これらを使ってガマの空間全体を演出する一つのインスタレーション作品です。 ガマ内には、人の形をしたオブジェがいくつも置かれます。 訪れる人々は、このオブジェたちに直接触れたり、座ったり、横たわったりすることによって、過去から現在、そして未来まで、ガマの内部で起こったこと、 人間の生活を、時の波動として感じます。オブジェが媒介となり、人間の生命と潜在的な対話をすることが出来るのです。それは見る側によって、快適さを感じ る場合もあり、恐怖を感じることもあるでしょう。 オブジェ自体は、フクギの葉で黄色く染められ、中には新聞紙が詰められています。 新聞は、人間の歴史を語る社会の日記のようなものだと考えられるからです。 そして、サトウキビや沖縄に自生する草花も設置されます。それらは、生き物としての使命に則り、インスタレーションの一部でありながらも、会期中に様々に変化していくことでしょう。 豚の油の炎によってできるガマ内の壁 や床に映る影は、私たちの人生が光と影によって成り立っていることを教えてくれるはずです。光を放つ輝かしい部分とそれに付き添って離れない影の部分。そ れは表裏一体のものであり、相互に関連し合う一ユニットなのです。また大きな視点で見れば、一対になった光の部分と影の部分、これは過去に人間がくぐり抜 けて来た歴史自体にも言えることだと思います。 また、鏡がガマの中のあらゆる所に置かれることにより、そこに新たな場所が投影されます。現実の世界と逆転した全く新たな世界、それは見る者に人間のうちなる宇宙と外なる宇宙を感じさせることのできる聖なるメディアの役割を果たすのです。 鏡が「影見(かげみ)の転」と呼ばれ、古来日本では霊的な物や神社の神体とされ、魔よけとして用いられて来たように、それをのぞく人々の心の中に過去の記憶を蘇らせ、現在に映し出すことでしょう。

ワークショップ

オープニングに合わせて、地域住民や観光客と太陽光線と鏡を使った火をつけるワークショップをおこなった。

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